液状化対策

Measures against soil liquefaction

TNF2.0工法の液状化抑制効果を数値評価

当社では、TNF2.0工法の液状化に対する有効性をFEM解析により検証し、設計へ反映しています。液状化リスクの評価には「せん断ひずみ振幅」を指標とし、安全な設計につなげています。

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液状化リスクの評価

液状化とは、大規模地震による強い振動で地盤が流体状になる現象です。砂や水が地表に噴出し、建物の傾斜や沈下など深刻な被害を引き起こす恐れがあります。特に、地表から約6メートルまでの土層で液状化が発生すると、建物への影響が最も大きいとされています。

TNF2.0工法は、建物直下約2~3mの地盤を改良する浅層改良工法であり、液状化が発生しやすい層の強度を高めることで、地盤支持力の低下を防ぎます。当社では、3D地盤モデルを用いたFEM時刻歴応答解析により、液状化リスクを数値的に評価しています。

TNF2.0工法の液状化防止効果

液状化のしくみ

通常、地盤内の土粒子は互いに支え合い安定を保っています。地震による衝撃でこの接触が崩れると、地盤は一時的に支持力を失い、砂や水が地表に噴出する恐れがあります。その結果、建物が傾くなどの被害が生じる可能性があります。

杭工法との比較

従来の杭基礎では、液状化によって地盤が沈下すると、杭頭が露出する場合があります。
この状態では水平力に対して脆弱となり、杭の損傷や変形が生じ建物に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

※出典:地盤ネット株式会社
液状化によって地盤沈下し杭頭が露出した状態

一方、TNF工法をはじめとする浅層改良工法は、液状化対策に有効とされています。
特に、建物被害が大きくなるのは地表から約6mまでの土層で液状化が発生した場合といわれています。
TNF工法では、建物直下約2~3mの地盤を改良し、液状化が生じやすい層の強度を高めることで、地震動による地盤支持力の低下を抑え不同沈下を抑制します。

能登半島地震調査

2024年1月に発生した能登半島地震において、同一区画内でTNF工法を採用した建物と他工法を採用した建物の被害状況を比較しました。
調査の結果、TNF工法の建物では液状化被害が確認されず、液状化対策として有効であることが示されました。

(図) 新潟市西区坂井(液状化区域)

他工法の建物:液状化による噴砂やクラックが発生し、営業を中止。

液状化による噴砂
地盤沈下・クラック

TNF工法の建物:液状化被害はなく、通常営業を継続。

TNF適用区画は液状化被害なし(通常通り営業)

【地震】能登半島地震調査

FEMによる液状化解析

当社では、地盤の3Dモデルを用いたFEM時刻歴応答解析により、液状化被害のリスクを評価しています。この解析により、複雑な地層条件でも応力分布や変形挙動を高精度に把握でき、設計段階で液状化対策の有効性を定量的に検証できます。

地盤の3Dモデル
※地盤調査で得た複数地点のボーリングデータを基に地層を再現

液状化リスクの評価指標

解析では、日本建築学会の設計指針に基づく「せん断ひずみ振幅」を算出し、液状化リスクを評価します。

建築基準では、
・せん断ひずみ振幅が5%未満:液状化リスクが低い
・せん断ひずみ振幅が5%以上:液状化リスクが高まる
とされています。

当社の解析では、建設予定地付近に設置された地震観測点で実際に観測された地震波を用い、地盤応答を再現しています。

補正N値と液状化抵抗、動的せん断ひずみの関係 
(建築基礎構造設計指針より)

解析結果

下図は、TNF工法を採用した地盤における「せん断ひずみ分布」を示すコンター図です。
結果として、せん断ひずみ振幅は3.5%となり、基準値である5%を下回っています。
このため、液状化による被害リスクは低いと評価されます。

TNFハイブリッド工法による、さらなる液状化対策

通常のTNF工法だけでは抑制が困難なケースに対し、当社は「TNFハイブリッド工法」を提案しています。
これは、TNF工法による改良地盤の下に木杭(丸太杭)を打設し、液状化や圧密沈下を抑制するものです。

【工法】TNFハイブリッド工法

解析事例

山口県内の建設予定地で、TNF工法とTNFハイブリッド工法を比較解析しました。

条件
・液状化層:深さ2?5mに分布
・地震動:熊本地震の観測データを使用

TNF工法:

解析の結果、せん断ひずみ振幅が21.1%となり、基準値である5%を大きく上回りました。
このため、液状化リスクが高いと評価されます。

図:TNF工法による解析結果(せん断ひずみ振幅コンター図 および せん断応力‐ひずみ関係)
TNFハイブリッド工法:

同条件で解析した結果、せん断ひずみ振幅は3.6%となり、基準値の5%を下回りました。
この結果から、液状化リスクはきわめて低いと評価されました。
これらの解析フローを通じて、当社は安心・安全な設計を行っています。

図:TNFハイブリッド工法による解析結果(せん断ひずみ振幅コンター図 および せん断応力‐ひずみ関係)

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